魚
貝
の
美
味
し
い
店
に
は
理
由
が
あ
る
の
で
す
。
築地・豊洲で直買いした四季の魚を、味わう。
ATTITUDE
魚を取り巻く状況について、
「魚貝ののぶ」が想うこと。
刺身は決して高級料理ではない。
もともと日本人は魚喰いの民族と言われるほど、魚を食べることと生きることが切っても切れない関係にありました。多くの日本人にとって、魚を食べることは生活の一部でした。ところが今では値段が高くて、刺身をお腹いっぱい食べようとする人はそんなにいません。高級食材のようになってしまいました。
そうなってしまっているのには、一つこんな理由があります。
私たち料理人の世界でいうと、市場にみずから足を運んで魚を買い付ける人が少なくなってきました。より合理的に利益を得ようとするあまり、市場まで出向く手間と時間を単なるコストとして計算するようになってしまったからです。つまり料理人という仕事が、飲食というビジネスに変貌してきたのです。
料理人みずから市場に足を運ぶ意味
料理人が自分で市場へ足を運ばなくなったということは、自分ではない誰か他の人、もしくは何らかのシステムによって魚を一律的にセレクトし配送してもらう必要があります。こうして、どこの居酒屋に行っても同じ魚ばかりが並ぶようになってきました。そして仲介コストは当然、刺身の価格に上乗せされていきます。
料理をつくる人間が市場の人と顔を合わせない。自分で現物を前に魚を選ばない。届けられる魚の質も感情も落ちていきます。
魚貝ののぶでは、店を営業する日は毎朝、築地・豊洲の市場に行き魚を仕入れています(→ 写真記録「築地を行く」/→ 「豊洲を行く」)。料理人と仲買人が個人と個人の関係を切り結ぶことが必須なのです。
店主土田(→ PROFILE)は料理修行をしていた20代後半から、仕事時間外で築地市場に通いはじめるようになりました。仲買人たちの世界に魅了され、彼らの世界を料理という仕事を通して切り結んでいく店を作りたいと思うようになりました。
そして2016年、「魚貝ののぶ」を始めました。
現場のやり取りから生まれる、より良い価格。
魚は、飯のアテにちょいとつまむだけの贅沢料理ではなかったのです。それだけでお腹いっぱい食べられる日本の食文化だったのです。
いい魚貝を生活に即した価格で提供できるかどうかは、料理に携わる人間が仲買人の現場へ足を運び、人の関係を築き、自分の目で魚を見て買うという営みが必須なのです。それをサボっているのか、サボっていないのか。その差がとても大きいのです。毎日顔を合わせる気心の知れた料理人に対しては必然、仲買人もより良い魚をより良い価格で卸してくれるものだからです。
こうしたやり方と考え方を、魚貝ののぶは大切にしています。